2021.09.06
コラム

門脈体循環シャントの診断と治療

門脈体循環シャントの診断と治療

こんにちは、福島中央どうぶつクリニックです。
先日猫ちゃんの門脈体循環シャントの手術を実施しましたので、今回は門脈体循環シャントについて記載したいと思います。

門脈体循環シャントとは

腸や脾臓などからの血流を肝臓に運ぶ門脈という血管に肝臓を迂回するような異常な血管(シャント血管)が形成されている疾患です。シャント血管は肝臓を迂回しているので、肝臓を経由しない血液が全身に直接流れてしまうことで様々な症状を起こします。この疾患には、シャント血管の位置により「左胃静脈-横隔静脈-後大静脈シャント」や「右胃静脈・脾静脈-奇静脈シャント」など多くのタイプが存在します。
肝臓はもともと腸で吸収した栄養素を処理して蓄積したり、また栄養と同時に吸収されたアンモニアなどの毒素の分解も行っています。したがって、病態が進行すると肝機能が低下していき、肝線維症や肝硬変へと進行していきます。また、アンモニアの処理能力が低いために、高アンモニア血症による神経症状(肝性脳症)を起こすことがあります。

症状について

肝性脳症による神経症状として、食後によだれが増える・意識が朦朧とする・ふらつく・発作を起こす、などの症状が見られます。また、肝機能の低下や栄養処理能力の低下により成長不良や削痩なども見られます。典型的には、この疾患をもつ症例は兄弟と比較して体格が小さい傾向があると言われています。

診断について

門脈体循環シャントの最終的な診断法は、CTなどの画像診断となりますが、ステップ踏んで検査を進めていく必要があります。

一般血液検査

高アンモニア血症や肝不全兆候(血糖値・尿素窒素・コレステロール・アルブミン値などの低下)、肝酵素値の上昇などを確認します。

総胆汁酸値測定

特殊な血液検査の一種であり、食前/食後の血清中総胆汁酸値を測定することで肝機能が低下していることを確認します。

画像診断

超音波・門脈造影によるレントゲンなどがありますが、現在はCTによる診断が侵襲性の低さや精度のなどの面からゴールドスタンダードとなっており、シャント血管自体を検出し治療法を決定する材料となります。

 

治療法

治療法には内科治療と外科治療があります。内科治療でシャント血管が変化する事はありませんので、肝性脳症などの症状を緩和していく治療がメインとなります。

内科治療

肝性脳症の症状を軽減するようなラクツロース や抗菌剤、療法食などが該当します。また、肝機能を維持するための必須アミノ酸のサプリメントも有効です。

外科治療

手術ではシャント血管を閉塞させることにより肝臓をバイパスしていた血液を肝臓に運べるようにし、”腸や脾臓など→門脈→肝臓→全身循環”という本来の血液の流れを回復させます。門脈の血流が増えれば血管はさらに発達し、それに反応して肝臓のサイズ/機能とも回復します。
動物種・肝臓の組織の状態・術後の門脈の発達の程度によりますが、手術でシャント血管を完全に閉塞することができれば治癒を目指すこともできます。血流のシャント率が高い場合には、1回の手術で完全に閉塞させてしまうと門脈圧亢進症という致死的な状況となることがありますので、2回に分けた手術が必要となることがあります(部分結紮→完全結紮)。また、シャント血管の部分結紮をしても門脈の発達が見られない症例が猫ちゃんの一部に存在しますので、その場合は2回の手術で出来るだけ肝臓の血流を増やし、内科治療で維持を図ります。
手術には主に以下の方法がありますが、当院では微細な門脈圧の調整が可能な結紮術を主に採用しています。

結紮術医療用の縫合糸によりシャント血管を閉塞させます。
セロハンバンド法:セロハンを血管に巻きつけ、炎症反応により血管が徐々に閉塞していくことを利用した方法です。
アメロイドコンストリクター法:アメロイドリングという特殊な器具を血管周囲に設置し、内部のカゼインが水分吸収により徐々に閉塞していく事を利用した方法です。
ハイドロオクルーダー法:ハイドロオクルーダーという特殊な器具も用い、術後にも血管の締め具合を調整できる方法です。

 

まとめ

門脈体循環シャントは早期の治療でかなりの改善や治癒が見込める事の多い病気です。症状や血液検査などで疑いがある場合は早期に詳細な検査を実施し、適切な治療を実施していくことが重要です。