2021.08.31
コラム

椎間板ヘルニアの診断と治療

椎間板ヘルニアの診断と治療

こんにちは、福島中央どうぶつクリニックです。
先月椎間板ヘルニアの手術(ヘミラミネクトミー)が続きましたので、今回は胸腰部の椎間板ヘルニアについて記載してみたいと思います。

椎間板ヘルニアとは?

椎間板ヘルニアとは、背骨のクッション材となっている椎間板が脊髄側に突出して圧迫し、痛みや様々な程度の麻痺を起こす疾患です。一般的には、椎間板中心の髄核が突出する急性のタイプ(Hansen Ⅰ型)、加齢に伴い椎間板辺縁の層である線維輪がに肥厚する慢性進行性のタイプ(Hansen Ⅱ型)に分けられます。また、ごく少量の椎間板が高速で突出し、激しい脊髄損傷を引き起こす稀なタイプ(以前はⅢ型と呼ばれていた)もタイプ存在します。
ヘルニアによる脊髄損傷が重度な場合は、進行性脊髄軟化症という病態に進行することがあり、進行性に脊髄が壊死する致死的な病態となることも稀にあります。

症状について

Hansen Ⅰ型の場合は、突然の背部痛・跛行(びっこ)・後肢のふらつき・後肢を引きずる、などの症状が現れます。背部痛のみの場合は、やや分かりにくいのですが、背弯・震え・しっぽを下げたままにする・寝返り時の痛み、などが現れることがあります。
Hansen Ⅱ型の場合は、数ヶ月〜数年に渡って進行する後肢の虚弱やふらつきなどが主な症状です。

重傷度の分類

胸腰部の椎間板ヘルニアの重傷度は、歩様・神経学的検査により以下のように分類されます。

 
(グレード) (症状)
 痛みだけ
 ふらつきながら歩ける
 後肢は動かせるが、歩けない
 後肢は全く動かないが、深部痛覚(骨などの痛覚)はある
 後肢は全く動かず、深部痛覚もない

 

椎間板ヘルニアの診断

椎間板ヘルニアの診断は、神経学的検査と画像診断で行います。

神経学的検査

脳神経・前肢・後肢の神経の状態を各種反射の強さを評価し、病変部の位置を特定します。胸腰部椎間板ヘルニアの場合は、脳神経・前肢に異常は見られず、後肢の神経スコアの低下を呈します。また、触診で背部痛を認めることが多くあります。

画像診断

ヘルニア診断の画像診断には、MRI検査・CT検査(脊髄造影)・レントゲン検査(脊髄造影)があります。
MRI検査は軟部組織の解像度が非常に高く、ヘルニア/脊髄自身、脊髄の炎症の程度、進行性脊髄軟化症の評価ができ、椎間板ヘルニアの最も確実な診断ツールです。CT/レントゲン検査では、脊髄造影という手法を使用して脊髄への圧迫を評価し、椎間板ヘルニアや脊髄腫瘍などの検出をします。
MRIとCT検査は実施できる施設が限られますので、犬種・年齢・経過・神経学的検査などから椎間板ヘルニアが疑わしい場合は脊髄造影によるレントゲン検査を実施します。

治療法

治療法には、内科治療と外科治療があります。

内科治療

安静や鎮痛剤、消炎剤の投与などが挙げれらます。グレードが比較的低い場合は一般的に内科治療が選択されます。

外科治療

グレードが高い場合や内科治療で反応が悪い場合、再発性の場合などに外科治療が選択されます。手術の目的は、椎弓または椎体の一部を除去して椎柱管内にアプローチして椎間板ヘルニアを除去し、脊髄への圧迫を解除することにあります。
手術法には目的に合わせて主に以下のものがあります。

・ヘミラミネクトミー(片側椎弓切除術):主にⅠ型に適用します。
・ミニヘミラミネクトミー(小範囲片側椎弓切除術):コルペクトミーに併用して行います。
・コルペクトミー(PLC,部分椎体切除術):主にⅡ型に適用します。

 

 

まとめ

椎間板ヘルニアの治療のためには、神経学的検査や画像診断など細かい病態把握が不可欠です。また、確定診断のためには全身麻酔を必要とするため、神経の状況に応じた適切な診断フローとコンサルティングが重要となります。
上記に該当するような症状がある場合、早い段階で動物病院を受診することが必要と言えます。