2021.06.07
コラム

【肥満細胞腫と腫瘍切除後の皮膚形成術】

【肥満細胞腫と腫瘍切除後の皮膚形成術】

こんにちは、福島中央どうぶつクリニックです。

先日わんちゃんの大腿部・肥満細胞腫切除と皮膚形成術(フランクフォールドフラップ)による欠損部の閉鎖を行いました。今回はそれに関連して、肥満細胞腫と皮膚形成術について述べたいと思います。

肥満細胞腫とは

肥満細胞腫とは、アレルギーなどに関与する炎症細胞である肥満細胞の悪性腫瘍であり、犬猫とも皮膚腫瘍の中で大きな割合を占めています。

特徴的な症状

肥満細胞腫は、しこりを形成するだけでなく、特徴的なダリエ兆候を伴うことがあります。肥満細胞はヒスタミンなどのアレルギーに関連する物質を放出することがあるため、それに関連したしこり周辺の赤み・かゆみや、胃酸過多に関連する嘔吐や消化管出血(黒色便)を呈することがあります。

治療法について

大きくは外科治療と抗癌剤・分子標的薬を含む内科治療に別れますが、根治を目指すのであれば広い範囲を確保した外科切除が第一選択となります。万が一切除が不十分だった場合は、拡大切除/放射線治療/化学療法を補助療法として実施していくことが一般的です。

外科手術と皮膚形成術

肥満細胞腫はしこりの周辺に細胞レベルでの広がりを持つ腫瘍であるため、肉眼的に正常に見える組織(=マージン)も含め広範に切除していく必要があります。体幹部は皮膚の余剰があるため単純な閉鎖法で傷を閉じることができますが、手足や頭頸部には皮膚の余りが少なく、単純閉鎖ができない場合には皮膚形成術が必要となります。その方法には、有軸皮弁や有茎皮弁などがあり、つまり切除した部位に近接する皮膚を回転/伸展させて切除部位を閉鎖する方法です。今回使用したフランクフォールドフラップとは、後肢と脇腹との間にある皮膚のヒダを利用する方法のことです。

 

まとめ

肥満細胞腫には様々な治療法がありますが、初回の広範囲な外科切除が最も根治を目指しやすい治療法となります。不必要な皮膚形成術は行うべきではありませんが、皮膚形成術により切除の自由度が広がり、より根治が目指しやすくなる場合もあります。皮膚形成術に関しては、皮膚の生存性に影響する丁寧な組織の扱いや栄養血管の温存が非常に重要ですので、手術に関して習熟した獣医師に相談する事が必要となります。