2023.05.13
症例紹介

【環軸椎不安定症(AAI)と環軸椎に対する腹側固定術】

【環軸椎不安定症(AAI)と環軸椎に対する腹側固定術】

こんにちは、福島中央どうぶつクリニックです。
今回は、当院で診断・治療をした環軸椎不安定症の症例をご紹介いたします。
環軸椎体不安定症は、頚部痛や四肢の麻痺を特徴とする頚部の脊髄疾患であり、第1頚椎(環椎)と第2頚椎(軸椎)関節とに緩みがああることで発生する疾患です。重症度によっては、突然死を引き起こすことのあるものです。治療としては、主に手術により環椎と軸椎を固定し安定化を図りますが、麻酔リスクが高い場合はネックブレースを使用して頚部の不動化をしながら鎮痛剤などの内科治療を実施します。
※本文の中で手術時の写真を掲載しますので、閲覧の際はご留意いただきますようお願いします。

症例情報と症状

⚫︎症例:8ヶ月齢、チワワ、雌(未避妊)
⚫︎基礎疾患:特になし
⚫︎症状:数日前に突然震えだして動けなくなり、寝たきりの状態になってしまい、他院で内科治療を実施するも反応がなくセカンドオピニオンのために当院受診。

初診日の検査所見

初診日の検査所見は以下の通り。
⚫︎神経検査:頚部に顕著な神経過敏と頚部痛あり、歩行不可(四肢随意運動あり)、四肢CP0・浅部痛覚2、脳神経検査問題なし
⚫︎無麻酔CT検査:骨折などの外傷所見なし
以上の所見より、強く頚部の神経疾患を疑う。そのため、後日全身麻酔下での頚部のストレスポジションを含む造影CT検査(脊髄造影)を実施することとした。

 

造影CT検査(脊髄造影)

全身麻酔下で画像診断を実施した。脊髄造影は腰椎穿刺により実施した。
⚫︎CT検査:ストレスポジションにより環椎・軸椎の動揺が明瞭化し、軸椎歯突起による頸髄の圧迫が認められる(造影欠損あり)
以上の所見より、環軸椎不安定症(AAI)と診断。飼い主様と相談の上、手術を実施することとした。

 

環軸椎に対する腹側固定術

手術では、頚部を十分に伸展した状態で仰臥位に体を保持し、頚部腹側の正中切開を行った。気管・迷走交感神経幹・反回喉頭神経などの重要構造物に注意しながら気管の左側を開創し、環椎と軸椎の腹側面を露出。その後、環軸関節の関節包を切開して関節面を掻爬した。関節の位置を整復した後、経関節ピンと椎体への支持固定用のピンを計6本装着。関節面に海綿骨移植を実施した後にポリメチルメタクリレート(PMMA)でピンを固定し、定法通りに閉創し手術は終了とした。術後のレントゲンにおいて適切に環軸関節が整復・固定されているのを確認した。

 

術後の経過

すでに術前のペインコントロールで歩行が可能な状態ではあったが、術後は数日で歩行時のふらつきは顕著に減少した。その後も徐々に歩行時のふらつきは軽減していき、術後1ヶ月程度で歩様はほぼ正常な状態となった。術後約3ヶ月経過した今現在は、経関節ピンの1本が破損したものの特にピンの迷入などのも認められず、環軸関節の癒合によりさらに安定した状況であり、疼痛もなく通常通りに生活して良好な状態である。

まとめ

環軸椎不安定症は、突然死を起こすこともある治療の難しい頚部神経疾患であるが、神経学的検査やCTなどの画像診断による正確な診断が治療する上で必要不可欠である。頸部の下垂(下を向いたまま)や頚部の屈曲を嫌がる(下を向かずに正面を向いたまま)などの頚部痛症状や、四肢の動きの異常を感じた場合にはまずはお近くの動物病院を早急に受診することが必要である。