2022.05.03
症例紹介

【尿管結石と腎臓無形成】

【尿管結石と腎臓無形成】

こんにちは、福島中央どうふつクリニックです。
今回は当院での症例と治療方法の紹介を症例紹介という形式でご紹介したいと思います。
本文では手術時の写真等を掲載しますので、閲覧の際はご留意いただきますようお願いいたします。

症例情報と来院時の主訴

●症例情報:(初診時)5歳、猫、去勢雄
●基礎疾患:肥大型心筋症(HCM)
●主訴:約2週間前から嘔吐・食欲不振・全般性発作。近医で検査したところ尿管結石の可能性を指摘され、セカンドオピニオンのために当院受診。

初診時の検査と診断

●身体検査:皮下浮腫と左腎の腫大あり
●血液検査:貧血(ヘマトクリット24.1%)と重度の尿毒症(BUN 206mg/dl、CRE 15.7mg/dl、Phos 18.1mg/dl)を認める。
●超音波検査:左腎の水腎症を確認するが、尿管結石は不明瞭。他には腹水と胸水を確認。右腎は確認できない。
●単純レントゲン:尿管結石を疑う不透過性領域あり。胸水あり。
●尿検査:血尿のみであり、細菌は認めない。
以上の点より、左側の尿管結石と右側の腎臓無形成と診断。尿産生は左腎に依存するため、手術による救済が必須と判断する。左腎盂の拡張が軽度(3mm)であることより腎瘻チューブ挿入は不適と判断し、翌日早急に手術をすることを決定。胸水/腹水貯留と皮下浮腫は、尿量に対しての輸液量が多かったことに起因しており、基礎疾患を考量しても水分のinとoutのバランスを取りながら手術に備えるため、尿道カテーテルを設置。

 

 

術中所見と手術方法

入院開始より尿道カテーテルを挿入し尿量を逐一確認すると乏尿となっていることが確認され、尿量に合わせた輸液量の調整を実施した。また、乏尿に伴い手術当日には、不整脈により致死的な状態を招きうる高カリウム血症(9.4mmol/l)を呈したため、重炭酸ナトリウムの投与を適宜実施し状態改善をしながら手術を実施した(手術直前K 6.9mmol/l)。また、手術中は心拍数と血圧に注意しながらドブタミンの持続点滴を使用し、麻薬性鎮痛剤(フェンタニル)を使用して十分な鎮痛のもとに手術を実施した。

術中所見

左の尿管の膀胱直前に非可動性の結石6個を確認し、部位と可動性を考慮して術式は「尿管膀胱新吻合術(膀胱外法)」を実施することに決定。右腎は付随する血管・尿管とも確認されず、無形成と判断された。

手術(尿管膀胱新吻合術)

手術では、尿管を非可動性の結石ごと切除し、カテーテルを芯として膀胱の適切な領域に吻合した。吻合の際は7-0ポリプロピレンの縫合糸による単純結節縫合を行い、尿の漏洩と尿管の閉塞が解除されていることを確認して終了とした。手術途中から多量の尿の排出を認めたため、術中に左腎が十分に機能することが推定された。

 

術後の経過

入院中の経過

手術直後から多量の尿排出が見られ(閉塞解除後利尿)、術後数時間後には高カリウム血症は消失した(K 4.6mmol/l)。また、術後1日目には腎臓の数値は基準範囲内に低下した(BUN 30mg/dl、CRE 1.9mg/dl、Phos 4.4)。また、過水和の消失とともに胸腹水は消失した。解除後利尿が落ち着いてきた術後4日目に退院となり、その際は左腎の拡張は認められない状況であった。本症例は、元気・食欲とも良好な状況で無事退院することができた。

 

通院での経過

退院日の9日後の再診の際には、体調に問題はなく腎臓の数値も基準範囲内であるため、抜糸した上で治療終了となった。
現在定期検診を実施しているが、尿管の疎通や腎機能に問題はなく、体調含め良好に推移している。