レッグ・ペルテス病の診断と治療
レッグ・ペルテス病の診断と治療
こんにちは、福島中央どうぶつクリニックです。
今回は小型犬の若齢期に多いレッグ・ペルテス病について説明していきます。
レッグ・ペルテス病とは
別名、大腿骨頭壊死症とも言われ、原因の完全な特定には至っていませんが、大腿骨頭に対する血流が何らかの要因で阻害されることにより大腿骨頭に壊死が生じる病気です。6-7ヶ月齢・10kg未満の小型犬での発生がもっとも多く、両側性に発生することもあります。大腿骨頭の骨端の骨折や変形性関節症(骨の変形をきたすようないわゆる関節炎)へと進行し強い痛みを起こしてしまいます。
症状について
症状は、数ヶ月間で徐々に進行する跛行(びっこ)になります。最初は間欠的な跛行から始まり、常に体重をかけるのを嫌うようになり問題のない対側肢に主に体重をかけるような歩き方になります。さらに進行した場合は、痛みのある足を完全に着かなくなってしまうこともあります。いずれにせよ痛みのある足への体重のかけ方は弱くなるため、対側肢に比べて筋肉量が顕著に低下してきます。
若齢の小型犬の跛行の原因として最も区別しなければならないのは膝蓋骨脱臼(内方/外方)です。膝蓋骨脱臼の跛行の特徴は、間欠的であり突如跛行や挙上を呈したかと思えばしばらくするとまた通常の歩行に戻るようなタイプになります。関節炎を併発した場合は継続する跛行を呈することもありますが、やや稀な症状となります。
診断について
診断は視診と触診(整形外科学的検査)、レントゲン検査を代表とした画像診断となります。
視診
視診では主に歩様を観察します。レッグ・ペルテス病の場合に最も多いのは負重性跛行(体重のかけ方が弱いタイプの跛行)です。慢性化している場合には、完全に患肢全く使用せず3本足で歩行しているケースも見受けられます。
整形外科学的検査
この検査では関節・筋肉・骨の状況を詳細に触診していきます。この疾患の場合には股関節の屈曲伸展時に痛みを呈することがほとんどであり、関節の可動域の減少が見られることもあります。また、片側の足だけが罹患している場合、患肢の筋肉が萎縮しており左右の筋肉量に大きな差が見られる場合もあります。
画像診断
診断ツールとしてはレントゲン・CT・MRIなどがありますが、レントゲン検査が最も一般的です。レントゲンでは、大腿骨頭の骨融解や変形などを確認していきます。通常の撮影ポジションでの撮影で所見が分かりづらい場合には、フロッグ・レッグ・ポジションという股関節をよりみやすいポジションでの撮影にて診断していきます。
治療法について
治療法には内科治療と外科治療があります。
内科治療
鎮痛剤やサプリメントなどで痛みの緩和をして行くことが目的となります。
外科治療
強い痛みのために大半の場合は手術が実施されます。手術方法は以下の通りです。
大腿骨頭切除術(FHO)
大腿骨頭〜骨頸部を切除する方法であり、正常な関節構造は失われますが、術後の関節周囲の繊維化や筋肉の支持により通常の関節と近い動きができるようになります。術後早期から他動的関節可動域訓練(PROM)などのリハビリをすることが患肢の早期の回復を促すために重要ですが、十分に通常の歩行と遜色のないレベルまで歩行することが可能です。
股関節全置換術(THR)
人工関節を使用して歩行機能を維持する方法であり、実施することのできるのは非常に清潔度の高い陽圧換気のできる手術室を装備したような整形外科専門病院に限られます。
まとめ
レッグ・ペルテス病は、若齢期の小型犬の跛行の中では比較的多い原因となります。病態が進行すると変形性関節症となり治療後の回復にも影響しますので、早期発見・早期治療が非常に重要と言えます。