症例発表が獣医学雑誌に掲載されました!
症例発表が獣医学雑誌に掲載されました!
こんにちは、福島中央どうぶつクリニックです。
今回、獣医学雑誌に掲載されたのは私が東京の動物病院で勤務している際の治療例であり、「重複後大静脈に併発した両側後大静脈後尿管に両側尿管結石を生じた猫の一例」という珍しい症例の治療例です。
この症例はやや複雑なので、今回は尿管結石について簡単に説明していこうと思います。
尿管結石とは
尿管結石とは、腎臓にできた結石(腎結石)が、腎臓と膀胱を繋ぐ尿管という細い管状の臓器に詰まってしまう病態です。尿管の太さは、猫で通常1mm以下の内径であるため、小さな結石でも閉塞が起こることがあります。
尿管結石の症状
尿管結石が発生すると、”水腎症/水尿管”という閉塞した尿管の部位よりも上の部位の腎臓・尿管に尿が溜まって拡張した状況が発生します。これにより尿毒症が発生し、尿量の減少・むくみ・腹部の痛み・嘔吐・元気消失などの様々な症状が起きます。厄介なのは尿管結石特有の症状があまりなく、症状から推測できないことです。
診断法
診断は、血液検査・超音波検査・レントゲン検査・尿検査により行います。特殊な検査として、CT検査や腎盂造影検査などが挙げられ、状況により基本の検査に追加していきます。
治療法
治療法は、大きく内科治療と外科治療とに分けられますが、病態の緊急性や治療反応の面から結果的に外科治療が選択されることが大半となります。
内科治療は、輸液療法や尿管の痙攣をとる薬剤、消炎剤などです。
外科治療は、尿管切開術/尿管膀胱新吻合術/SUB(皮下尿管バイパス)などとなります。旧来は腎臓尿管摘出も治療オプションに入っていましたが、最近はできるだけ腎臓の機能を生かした上記の治療法が推奨されています。ただし、ワンちゃんに比較的見られるような、尿管結石により腎臓に細菌が隔離されて内科療法が奏功しない病態(=膿腎症)の場合には、腎臓尿管摘出も適応となることがあります。
予防法は?
尿管結石の大半がシュウ酸カルシウムという溶けないタイプの結石であり、結石が出来やすい体質も関連しているので、完全な予防はかなり難しくなります。
それでもやはり十分な飲水量の確保や、腎臓に結石を持っている症例には食事療法も適応になってきます。
また、定期的な血液検査や超音波検査により腎結石を早期に検出しておければ、急激な体調不良の際に“もしかしたら”と疑うことができる可能性もあります。
まとめ
実は尿管結石は比較的多い病気であり、最近は比較的若い猫ちゃんにも発生するようになってきている印象です。定期的な健康診断が重要であることはやはり人と同じですので、腎結石などの早期発見が重要であると言えます。また、特に猫ちゃんの体調が急激に悪化した場合には、ホームドクターさんで超音波も含め詳しく検査してもらうことが重要です。